EXHIBITION FLOWERS OF KINDNESS
違うということでいじめられた経験があるからこそ寄り添える
ルミコ:中嶋弓子さんは、先月まで日本財団で難病の子どもと家族支援を担当されていましたが、どういう背景でその道を進むことになったのですか?
中嶋:5才から8才までアメリカに住んでいたのですが、幼少期からガールスカウトで活動していたこともありレモネードを作って売って寄付する、といった非営利活動に馴染んできました。帰国した際、日本語が読めないという理由から自らの意思で一学年下のクラスに入ったのですが、年齢が違うということや「キコクシジョ(帰国子女)」というだけでのけ者にされました。
大学生の頃もボランティアサークルを立ち上げる等、非営利活動には精力的に取り組んでいたのですが、広い世界を見たい!という思いから、卒業後は海外拠点も多いオリンパスに就職しました。
毎日国内外を飛び回って充実していたのですが、ある時、当時住んでいた最寄り駅で同じ時間に出社する障害者の方の存在に気付きます。その方は身長がとても低くて、階段を登るのに人の何倍も時間がかかっていました。エレベーターのない駅で、来る日も来る日も、手を貸そうか、声を掛けた方がいいのか、散々悩んで何もできず、家に帰っては落ち込み、涙が止まらない。
「私は世界を変えるような仕事をしているはずなのに、目の前の困っている人のために何もできていない」
それから、興味のある社会起業家の方のイベントなどに参加して、自分に出来ることはないだろうか?ともやもや考えながら行動していくうちに日本財団の先輩と出逢い、日本財団でなら私のもやもやの答えが見つかるかも!と思い足を踏み入れました。
ルミコ:実際、日本財団に入られて、活動を開始してどうでしたか?
中嶋:たくさんの分野に関わらせていただきましたが、その中でも難病の子どもと家族支援を一番長く担当させていただきました。今年の春、「難病の子どもと家族が教えてくれたこと」を上梓しましたので、よければ詳しくはそちらをお読みいただけると嬉しいです。
ルミコ:全国30か所の「難病の子どもと家族を支える拠点」でのエピソードがたくさん記されていましたね。
中嶋:日本財団に入社して、全国津々浦々たくさんの拠点に携わらせていただきました。その中で、せっかく生まれてきて「おめでとう」と言いたいけれども、 病気や障害があることで「おめでとう」と言い合えない理不尽さを目の当たりにして、自分が心の底から怒りや悲しみを感じるテーマになりました。
難病のお子さんや家族は、まだまだ制度の狭間にいる方も多くて、必要な支援にアクセスできていない方も多いです。なので、100%思う通りの支援を受けられていなくても、それでも支援を受けられるだけありがたい、と多くを望まないご家族が多いような印象を受けます。
あるご家族と新しい施設をつくるためのコンセプトを一緒に考えていた時、どんなことをしたいですか?とお伺いすると「あたりまえの暮らしをしたい」と仰られたんです。24時間365日終わらない子どものケアでろくに眠れない、仕事は辞めなければいけない、預け先がないから友達と飲みに行くなんて夢のまた夢。「あたりまえの暮らしがしたい」のは痛いほど理解できました。でも、私、「あたりまえ」って言葉がしっくりこなかったんです。「あたりまえ」ってなんだかゼロを目指して、へっこんだマイナスをなんとか埋めて更地にしてゼロにするみたいな感じがして。だから、もっと「あたりまえ」を超えるようなコンセプトを一緒に考えていきたいなと思いました。
「あたりまえ」って言葉がしっくりこない
すごく不条理だなと思うんです。子どもが生まれるってとてもおめでたいことなのに、難病や障害があって生まれてきたら、どこか「おめでとう」と言い合えない社会って。そんな世の中を少しでも良くしたいと思って、活動を続けています。具体的には、企業や自治体、NPOといった多様なセクターの事業開発や資金調達、PR等のご支援をしながら、東京おでかけプロジェクトと称して、難病の子どもと家族の外出支援をライフワークとして続けています。
難病の子どもと家族が行きたいところは、他の子どもと家族が行きたい場所と同じ場所、例えば東京おもちや美術館に行きたいんですよね。決して、バリアフリーが完備された福祉のにおいがする場所じゃない。でも、大勢の人がいると感染症リスクが気になったり、暗闇や音が気になる子がいたり、親御さんも普通の子が元気に走り回っていることに傷ついたりすることもあります。最近、ダイバーシティやインクルージョン、共生社会といって、みんな一緒に!と大雑把に混ぜられがちですが、やはり新しい場所に馴染むのにも時間がかかったり、受け入れ側にも難病の子ども達の事情がわからなくて、どうしたらいいかわからないことも多々あります。
なので、まずは難病の子どもと家族が行きたいと思っている場所を貸し切って、落ち着いた環境でご家族に安心してお越しいただいて、その店の店主の目を変えていくのが必要だと感じています。そうやって、丁寧に街と繋がっていくということをやっていかなくてはならないと考えています。神保町のブックハウスカフェや、池袋にある銭湯の妙法湯にもご協力いただいてこれまでイベントを行ってきました。是非LITTLE ARTISTS LEAGUEさんとも何かできるんじゃないかなって期待しています!
◎オンライン出版記念イベントのお知らせ(9月20日・21日夜)
豪華なゲストの皆様をお呼びして、著書のオンライン出版記念イベントを行います。ご興味ある方は是非ご参加ください。
障害児を産んでも、絶望しない世の中を作る。街の人の目を変えたい。
やさしさとは、想像すること
やさしさを語るとき、「優しい嘘なら嘘をついてもらってもいい」だとか、「辛くても嘘は嫌だから本音を聞きたい」といったことをよく聞くような気がします。それぞれの立場で色々な考え方があると思うんですが、以前私は本当のことをストレートに伝えることが、やさしさだと思っていました。でも、仕事仲間が物事をスムーズに進めるためにあえて本当のことを周りに言わずに配慮しているのを目の当たりにして、そういうやさしさもあるんだなと気づいて。結果に目が行きがちですが、「どんなことを想ってその判断に至ったのか」の経過が大切だと思うようになりました。過程を想像するとやさしさのアイディアも湧いてきたりもしますしね。
『やさしさとは想像すること』
中嶋弓子
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中嶋弓子(Philanthropy Producer)
1986年、京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、5歳からガールスカウトでの活動やレモネードスタンドの出展を通じ寄付文化に親しむ。帰国後に留年や不登校、退学を経験。大学在学中にボランティアサークルを立ち上げ、フェアトレード商品の輸入販売や環境に配慮した学園祭、不登校児支援プログラム等を企画。卒業後は、オリンパス(株)で海外営業やマーケティング業務に従事し、2014年より日本財団へ入職。2016年から「難病の子どもと家族を支えるプログラム」を担当。企業や行政、多様なセクターと連携しながら、国内外の先進地視察で得た知見を活かし、難病の子どもと家族のためのモデル拠点を全国30か所に整備。のべ300団体を超える非営利組織の運営支援を行ってきた。事業開発、助成金や寄付調達、難病児支援、多職種連携等をテーマにした講演、セミナー実績多数。2022年9月より独立。著書「難病の子どもと家族が教えてくれたこと」出版。
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ルミコ・ハーモニー(LITTLE ARTISTS LEAGUE)
LITTLE ARTISTS LEAGUE代表理事、アーティスト、アクティビスト。フィンランド人と結婚し三児の母になったことをきっかけに、気候変動問題をはじめとする社会問題を意識するように。オーガニック展でのこどもの絵のコンテストの審査員を務めるなど、アートを通じて社会課題を解決するアプローチをしています。
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クリストファー
モデル/日米ミックス
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小澤あき
一般社団法人MOTHER 代表理事
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末永幸歩
美術教育研究者
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NPO法人心魂プロジェクト
重度障がいの子たちとの交流で生まれたダイバーシティアート「やさしさの花」
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近田梨絵子
JOAA 日本オーガニックアロマ協会 代表
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青木弘
中央アフリカ共和国戦場フォトグラファー
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ダイアログ・ミュージアム「対話の森®️」
Description goes here -
ドローダウン/カレン優子
環境本/フリーランスPRで二児の母
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岩澤直美
異文化間教育の研究者&実践者
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